社会委員会報告

7月に行われた社会委員会の報告です


「シャルリ・エブド」事件、イスラム国による日本人人質事件、ギリシャ急進左派・右派連立政権樹立、ウクライナの徴兵制復活、ロシアの欧米協調路線廃止など、地政学的リスクが増大し、国際情勢が不安定化している現代。社会委員会では熊谷徹さんの『日本とドイツ ふたつの「戦後」』をテキストに、学びをスタートさせた。

 日本とドイツ。かつて軍事同盟を組み、戦争に敗れ、どん底からめざましい発展を遂げた両国。似ていると思いきや、相違点の方が多く見受けられるのである。ドイツの社会基盤は公共精神と倫理観にある。またこの二つの基盤の上に民主主義、法治主義、社会的市場経済、過去との対決、エコロジーの重視、討論を重視するリベラリズム、二大政党制を堅持している。

 テロの脅威がヨーロッパに及んだその時、それでもドイツは理念と倫理観を守り続けていた。201410月、ドイツ・ドレスデンにて「欧州のイスラム化に反対する愛国的な欧州人たち(PEGIDA)」が結成された。デモにはネオナチも混ざり、2万人が参加したという。ISメンバーによるベルギーのユダヤ博物館襲撃や移民に対する不満から、このようなグループが立ち上がってくることは、ある意味致し方ないと言えるのかもしれない。しかしメルケル首相、キリスト教会、新聞社、テレビ局までもがPEGIDAについて批判的論陣を張ったのである。風刺新聞社「シャルリ・エブド」襲撃という衝撃的な出来事の後にも、メルケル首相は「イスラム教はドイツに属する」と述べ、政府はあらゆる宗教の信者が互いの立場を尊重する社会を目指していることを示した。

 ドイツ社会は非常に頑丈な理念、公共精神と倫理に裏付けされた民主主義と法治主義をもって国家を運営している。それは一連のIS事件の最中もぶれず、貫かれた。そこには徹底的な過去との対決姿勢、特にナチス時代の反省が反映されているのだろう。