「導かれて」(アドヴェント第二主日)
マタイ福音書2:1-8
東の国の占星術の学者たちは星に導かれつつも、間違ってヘロデ宮殿に行くが、そこで権力者の不安や悪とは何かの学びを与えられる物語。
学者たちは、星に導かれて旅を続け、目的地に到着するが、最後の詰めのところでヘロデ王宮を訪ねるというミスを犯してしまう。しかし、王との出会いでで、まず権力者の不安、悪とは何かを学ぶ。神は人間の犯すミスを用いて大切なことを学ぶ時として下さる。
学者たちは訪問した王宮はさぞかし新しい王様の誕生をお祝する歓迎一色に包まれているだろうと思っていたが、そんなものはどこにもなかった。これはいったいどういうことなのかと思いつつ、学者たちはヘロデに宮殿訪問の目的(新しい王の礼拝)を明らかにする。
「これを聞いてヘロデ王は不安を抱いた。」王はかなりショックを受ける。新しい王の誕生は自分の失脚を意味するからであった。この政権崩壊につながる情報を得て、王は緊急会議を招集し、民の祭司長たちや律法学者たちに「メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。」会議では救い主はベツレヘムに誕生することが確認されるが、それがいつのことであるかがはっきりしない。「そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。」そして、「見つかったら知らせてくれ」るように命令を下し、学者たちを派遣する。その際、「わたしも行って拝もう。」との言葉を添えるが、それが偽りであり、実際は新しい王が多くの者に知られる前に抹殺することが本音であることを学者たちは察知する。占星術の学者たちは王とのやりとりで権力者の不安と悪の学びを与えられたのであった。
先般、アメリカで政権による盗聴が明るみにされた。国家安全保障局(NSA)が数百万人に上る米通信大手ベライゾンの顧客の通話履歴を秘密裏に収集していた。特定の人物ではなく、一般市民に広く網をかけて通話記録を調べるのは異例。アメリカの政権はヘロデ化する権力者になる危険に陥ろうとしている。このように一般市民は権力によりたえずチェックされているが、その逆はますます難しくなっている。だからこそ、旧約聖書の時代、権力の暴走を批判した預言者が果たした役割が今日のキリスト者の大切な使命であることを覚えたい。
先日、召されたマンデラ大統領はその役割を担い続けた方であった。