2017年3月社会委員会報告

 326日に「日本とドイツふたつの戦後」の第5章「日独エネルギー政策の違い」の読書会を行いました。

 日本では原発再稼働反対の国民が多数を占めているにもかかわらず、201412月の衆議院選挙で原発再稼働を目指す自民党が圧勝していることからも判るように、有権者は原発再稼働を政局を左右する重要な争点とみなしていない。

 一方、ドイツでは、20113月の福島原発事故後、1980年以前に運転開始の原発7基を即時停止、残りの9基も2022年末までに停止を決定し、原子力から再生可能エネルギーへの転換を急激に加速した。これは政治家が、原子力エネルギーを安全に使い続けることに責任を持てなくなったことと、原子力に固執していたら選挙に負けるという2つの理由に基づくものである。1986年チェルノブイリ事故で南部バイエルン州を中心に、農作物や土壌が放射能汚染されたから、ドイツでは既に、「脱原子力」と「再生可能エネルギー拡大」では国民合意ができており、新聞、雑誌、テレビ局の姿勢も反原子力で一致している。ドイツの人々は、多くの市民が再稼働に抗議しているのに原発が再稼働、日本は唯一の被爆国で、3年前にはフクシマで深刻な炉心溶融事故を経験した国が、市民の反対にもかかわらず原発に固執するのは何故なのか、不思議に思っている。保守系日刊紙は、「日本人は、原子力使用による生命や社会に対する影響という倫理的な問題よりも経済成長率を重んじ、放射能の健康への影響よりも、景気回復・賃金引き上げを重視した。」と見ている。
ドイツでは、原子力・エネルギー問題は、多数の人々に大きな影響を与えるので、技術や経済の観点からだけではなく、倫理的・文明論的な観点からも考えるべきとの立場を取っているが、日本では、原子力やエネルギー問題に詳しい専門家が決めるべきことで、哲学者や社会学者の出る幕ではないという立場を取っている。ドイツが技術と倫理にこだわる理由は、戦争中の苦い経験に基づいている。軍医の医学の進歩名目での人体実験、宇宙飛行のロケット開発がV2ミサイルになってロンドンを空爆したから、モラルなき技術大国になってはならないという反省がある。