「裁きを行う者」★
ゆるやかな部族の連合であったイスラエル12部族が「ほかのすべての国々のように」「裁きを行う王」を立てるに至る話。
話は年老いたサムエルが引退を決め、後継者として二人の息子を任命するところからはじまる。
「この息子たちは父の道を歩まず、不正な利益を求め、賄賂をとって裁きを曲げた。」これが二人が「裁き」を行った地である「ベェル・シェバ」と関係があると思われる。この地は泉が7ケ所もあり、それにより様々な産業が興り、また、交易の中継基地にもなるなど経済的に発展を遂げ続けていた。当然、多くの利権が発生すると同時に「不正な利益、賄賂」が生まれやすい場にもなっていた。
「裁きを行う者」として任命された二人であったが、「不正な利益」「賄賂」に負け「裁き」を負けてしまった。
この事件がきっかけとなり、イスラエルの長老たちがサムエルのところに申し入れに来る。
「あなたはすでに年を取られ、息子たちはあなたの道を歩んでいません。」とサムエルの息子たちの悪事を指摘する。その上で「今こそ、ほかのすべての国々のように、我々のために裁きを行う王を立てて下さい。」と申し入れてきた。
この「言い分」は「サムエルの目には悪と映った。」そこでサムエルは主に祈ると、主は彼に応えた。申し入れは神を王として君臨することを退けることであり、また、出エジプト以来、犯してきた「他の神々に仕える」という不信仰の繰り返しであると指摘する。その上で、「彼らの声」に従いなさいと言われた。また、警告として「彼らの上に君臨する王の権能」を教えなさいとも言われた。
サムエルはこれに従い、「王を要求する民に、主の言葉をことごとく伝えた。」のである。
しかし、民はサムエルの声に聴き従おうとはせずに、言い張った。「いいえ、われわれにはどうしても王が必要なのです。」
こうして、ゆるやかな部族連合であったイスラエル12部族が国家となる。
このサムエルの時期に王権の暴走をチェックする役割を担う存在として預言者団が生まれた。王は制度として生まれたが、王の権限は世俗のことに限定される。宗教については預言者と祭司に委ねられる。しかし、実態は中々、そうはいかなった。しかし、真の裁き主である神の支配は進行している。