「救い主の出エジプト」★

 

ベツレヘムからエジプト、そして、ナザレへと国境を越えて権力の刃を逃れて旅する幼子イエスとヨセフ・マリア物語。

東の占星術の学者たちが「別の道を通って自分たちの国」へ帰った後、神はヨセフに夢を通して生まれたばかりの赤子を連れて、ユダヤを脱出してエジプトへ行けと言われた。これを受け、彼は夜のうちに幼子イエスと母マリアを連れてエジプトへ向かった。「ヘロデの刃」から逃れるためのいわば「出ユダヤ」と言える。「夜」に決行されたようであることから、かなり緊急を要する国外脱出であった。

ヨセフたちがエジプトへ逃げ、幼子イエスの命は助かったものの、ヘロデは「占星術の学者たちにだまされたと知って」「ベツレヘムとその周辺一帯にいた2才以下の男の子を一人残さず殺させた」という蛮行を実施した。ヘロデは政権維持のためなら、どんな卑劣な行いも辞さなかった。これは権力犯罪とは何かを語る。

誕生したばかりの神のみ子は「出ユダヤ」を実行したことで、その命が守られた。ヘロデが死ぬと、神は夢を通して「起きて、子どもとその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい。」と、「出エジプト」を指示された。

ところが、ヘロデは死んだが、息子の「アルケラオが父ヘロデの跡をついでユダヤを支配している。」との情報に接したヨセフはそこに行くことを恐れた。まだ危険な状態が継続していたのである。そこで神はヨセフに安全な居場所であるガリラヤのナザレを示された。

ユダヤからエジプトへ、そして、ユダヤではなく、ガリラヤのナザレへと神のみ子イエスは向かう。これは預言者を通して言われた神の言葉の成就であり、どのような危機も救い主イエスを地上から抹殺することはできないことを証している。