「恐れるな」★
「母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもったことが明らかになった。」この大事件に恐れ、「夫ヨセフは正しい人であったので、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した。」。どうしてマリアが妊娠したのか。何が原因でそうなったのか。ヨセフは苦悩する。婚約中に、夫となる権利、父親となる権利がはく奪される。マリアを愛するヨセフ、どうすればいいのか。彼は「正しい人」であったのでその「正しさ」からいくつか選択することができた。
ひとつは、マリアに起きた事実を公にし、裁判にかける。判決は「石打ちの刑」となる。愛する女性をそのような目に合わせていいのか。
そうだ、まだ、方法があった。ひそかに二人の証人の前で離縁状と、離縁のしるしとなる金を渡せば、ことは処理できる。これで行こうと「決心した」。
ところが、この「決心」が揺さぶられる。自分はいいかもしれない。しかし、愛するマリアはどうなるのか。彼女は父親のいない子をひとりで育ててゆかなくてはならない。そのような目に合わせることが果たして「正しいこと」なのか。「正しさ」が行き詰まる。彼は疲れ、眠りへと導かれてゆく。
ヨセフに夢で命令が下される。「ダビデの子ヨセフ、恐れず妻マリアを迎え入れなさい。」「ヨセフは眠りから覚めると、主の天使が命じた通り、妻を迎え入れ」た。
クリスマスは「恐れ」に満ちた世界に「恐れるな」を出来事とする救い主を誕生させる神のみ業なのである。