「信じる者すべてに」★
「宗教改革者」ルターは「キリストの福音」の価値を再発見し、すべての人にそれを届ける働きを担った。それは「神の力」の発信源である「キリストの福音」が「信じる者すべてに」開かれた真理であることを伝えるためであった。
ルターの働きの代表的なものが3つある。「聖書」の翻訳、イラストの利用、当時の最先端技術の採用である。「キリストの福音」を動かない「名詞」にしておくのではなく、動く「動詞」にし、世界につなげるものであった。上記の3つを紹介する。
- 「聖書」の翻訳
ルターが生きた中世の後半、ラテン語は一部の聖職者や学者だけが読める特権的な言語となり、その言語で書かれた聖書はすでに民衆とかけ離れていた。それを誰もが読むことができる言語、すなわちドイツ語に翻訳し、「キリストの福音」がすべての人にとり、「神の力」となった。それはキリストの福音と人々の距離を縮める働きであり、聖書を開かれた「神の言葉」とすることになり、「福音は、ユダヤ人をはじめ、ギリシャ人にも、信じる者すべてに救いをもたらす神の力である。」とのパウロの信仰の確信をルターは継承したことになった。
- 挿絵(イラスト)入り聖書
民衆にわかりやすく伝える目的で、多くの木版画の挿絵が翻訳した聖書に収録された。今日で言えばイラスト入り聖書である。「開かれた聖書」となるための仕掛けとも言える。
- 最先端技術の利用
出版に際し、ドイツの印刷業者グーテンベルグが発明した活版印刷を用いた。宣伝の媒介として当時の最先端技術が持つ価値を利用したことになる。「印刷されたページを考えながら著述を行った最初の人物である」と言われている。翻訳された聖書を読む人にしっかりと届くように、どのように伝えるかだけでなく、どのように伝わるかを考えた人であった。
以上の3点を踏まえると宗教改革者ルターは戦略家であったとも言えよう。キリストの福音を「すべての人に」伝えるために様々な戦略を練り、聖書を翻訳する、挿絵を入れる、そして活版印刷という当時の最先端技術を用いた。
教会は「神の力」の発信源である「キリストの福音」が「信じる者すべてに」開かれた真理であることを伝えたルターの働きを覚えつつ、福音を新しい時代に届くための工夫をしてゆきたい。そのことで世界に「キリストの福音」の価値がさらに創造されてゆくと思う。