「民衆の間で」★

新約聖書 使徒言行録5章12節ー16節

ユダヤ当局と一回目の衝突後の使徒たちの伝道活動の要約箇所。
使徒たちは「エルサレムを離れず」との復活の主の命令の下、伝道活動を展開する。まず、イスカリオテのユダを失ったため、「マティア」と呼ばれる人を弟子に選出することで態勢を整える。そして、「五旬節の日」に「一同は聖霊に満たされ」と、神が主体となり「天下のあらゆる国」の言葉で「神の偉大な業」が語られる。中心となるメッセージは十字架のイエスが父なる神により主なるメシアとされたことであった。また、「美しの門」に置かれていた「足の不自由な男」を「ナザレの人イエス・キリストの名」により癒し、立ちあがらせる「不思議な業」等も実践される。それはエルサレム神殿が門の外に放置していた課題への挑戦であり、これまでの世界にない新しいサービス(奉仕)活動であった。
ところが弟子たちの中心的な存在であるペトロとヨハネがユダヤ当局に逮捕され、「イエスの名」による伝道の中止を命じられるという危機に直面する。しかし「神に従わないであなたがたに従うことが、神の前に正しいかどうか判断して下さい。」と宣言し、活動を継続する。
彼らを称賛する民衆は、当初「あえて仲間に加わる」ことはなかったが、次第に「多くの男女」が主を信じるようになってゆく。特に女性が仲間に加えられるということはそれまでのユダヤ教の伝道になく、この点でも新しいサービスが実践されてゆく。それは、生前のイエスの仲間にはすでに女性がいたこととも関係する。つまり、弟子たちの活動はイエスの伝道の継続であったということである。
伝道活動の場は「大通り」「エルサレム付近」と拡大してゆき、イエスの福音があらゆる枠を越えてゆくものであることが証されてゆく。また、民衆の苦悩からかけ離れていない伝道、それが初代教会の働きであった
伝道とは「あえて仲間に加わろうとしない」」民衆が対象で、ヨハネ福音書の言葉で言えば、「この囲いに入っていないほかの羊」である。それは私たちの家族、地域住民、会社の同僚、学校の友人などである。それらの兄弟姉妹は「囲いの外」の羊たちであり、神が私たちに備えた隣人なのである。