「主の道は正しい」

ホセア書(旧約聖書)14章

国家(北イスラエル)が滅びる前に、その回復を祈りつつ「主の道」を「正しい」と語る預言者ホセアの言葉。

 イスラエルの民はモーセの指導の下でエジプトを脱出し、荒れ野の40年の旅を終え「乳と蜜の流れる地」と言われる「カナン」に定住する。それは牧畜から農業を主体とする生活に代わることでもあった。その際、先住民族が信仰する様々な宗教の中で特に農業神とも言える「バアル宗教」への対応が求められた。
 この宗教への傾斜を促すような出来事が、ホセアの時代より約100年前の王アハブの時代にあった。彼は国家の繁栄のため、急成長をとげていたフェニキヤの都市国家シドンの王女イゼベルと政略結婚をするが、妻が信仰する「バアル宗教」の神殿を首都サマリアに建て、自らも礼拝した。それはヤーウェイ信仰者だけでなくバアル信仰者も多く存在する国の実情を踏まえた政策でもあった。この時、預言者エリヤが立ち上がり、バアル宗教を一掃し、ヤーウェイの神だけの信仰を目指したのだが、イスラエルの神「ヤーウェイ」だけでなく、「バアル」の神も大切にするいわば「あれも、これも」型の信仰から脱しきれなかった。
 ホセアの時代この型の信仰者は増加するだけでなく、ヤーウェイからバアルの神へという流れも加速する。ホセアはバアルとは「手でつくったもの」であり、それを「神」と呼んではならないと呼びかける。また北イスラエルを滅ぼすことになる軍事大国アッシリアをイスラエルに罰を下す神から命令された執行者(道具)として語る。ここに世界を支配する神観が示され、歴史を支配される主を「正(義)しい」とする信仰に堅く立つことが語られる。

 私たちは様々な神を信じる多くの人たちに取り囲まれ生活している。その中で主イエス・キリストのみを「正(義)しい」神と信じる信仰者として生きている。それは今日、さまざまな宗教が社会に存在することを認め(「宗教的多元主義」)、それらの価値を認めつつ共にある生き方でもあると思う。